高圧水による遠隔除染装置「Arounder」を開発

2013年3月8日
日立GEニュークリア・エナジー株式会社

日立GEニュークリア・エナジー株式会社(代表取締役社長:魚住 弘人/以下、日立GE)は、このたび、資源エネルギー庁の「建屋内の遠隔除染技術の開発」プロジェクトにおいて、福島第一原子力発電所の災害現場における放射線汚染環境の改善を目的とした高圧水を用いる遠隔除染装置「Arounder*」を開発しました。
今夏をめどに、福島第一原子力発電所における原子炉建屋内の除染作業での活用をめざします。

原子力災害現場は、放射線汚染により極めて苛酷な環境であり、作業員の被ばく低減のためには、除染装置等を遠隔で操作することが必要となります。

日立GEは、こうした必要性にこたえるため、これまでの原子力施設における遠隔操作技術を活用し、原子炉建屋内での除染作業に対応した、高圧水を用いる遠隔除染装置を実現しました。
今回開発した遠隔除染装置は、建物の床・壁表面の放射性付着物を高圧水により洗浄し、同時に回収する機構を設けることで、除染後の汚染水拡散を防止し、建屋内環境の改善を行うことができます。また、原子炉建屋内での稼動を可能とするよう除染装置本体を小型化し、除染用の高圧水を噴射・回収するための除染ヘッド部にアーム機構を用いて床・壁面へ押付ける動作を実現しています。さらに、高圧水の供給・回収設備は、別置きのポンプやタンク等に対応し、除染装置本体との間はホースで連結する構成としています。

*Arounder:
幅広い汚染形態に対応し、建屋内周辺を走破することから”All-rounder” (万能選手)と”Around”(周辺)の意味を込めて名づけた造語です。

今回開発した遠隔除染装置「Arounder」の特長は以下の通りです。

  1. 水圧制御により表面洗浄・塗装剥離・ハツリの対応が可能
    本除染装置は、供給水圧を25~200MPaにて調整可能なシステムとなります。これにより、現場での除染対象面において、表面洗浄・塗装剥離・ハツリの使い分けが可能となります。
    したがって、表面堆積物を取除くことで除染可能な表面汚染状態のエリア、コンクリート塗装面まで汚染が浸透しているエリア、コンクリート内部に汚染が浸透しているエリア等、幅広い現場の状況に対応が可能となります。
  2. 除染ヘッド部の最適化により汚染水とハツリ片を漏らさず回収可能
    本除染措置は、高圧水の噴射と回収を同時に実施可能な除染ヘッド部を有する構成となります。除染ヘッド部は、内部で高圧水が噴射されますが、ヘッド周りに取付けられたブラシの最適化により、除染水(供給高圧水)と汚染水およびハツリ片を漏らさず回収することが可能となっています。
    このことにより、除染作業時の汚染拡散は防止され、確実な除染作業が可能となります。
  3. 2mの高さまで除染可能なアーム機構を搭載
    本除染装置は、除染ヘッド部を床・壁面へ押付けるためのアーム機構を搭載する構成となります。アーム機構は、4自由度を有し、除染ヘッドを最高2mの壁面へ押付け、作業が可能となります。
    本アーム部は、除染装置移動時には本体へ収納するように折りたたむことが可能であり、原子炉建屋内での移動に障害とならない構造としています。

図1 遠隔除染装置のシステム構成及び装置本体外観写真
図1 遠隔除染装置のシステム構成及び装置本体外観写真

表1 遠隔除染装置の主な仕様
項目 仕様
除染装置本体 アーム型式 油圧シリンダ駆動リンク型
台車型式 クローラ式(高さ50mmの段差を乗越え可能)
質量 台車:約800kg、アーム:約40kg
台車寸法 W600×D1529×H1255mm(アーム及びヘッド部折畳み時)
ヘッド部ストローク 450mm
回収装置 タンク容量 1000L
ケーブル・ホース 長さ ケーブル:100m、ホース:75m

写真 操作卓外観
写真 操作卓外観

写真 コンクリートハツリ実施例
写真 コンクリートハツリ実施の例

照会先

日立GEニュークリア・エナジー株式会社
日立事業所 原子力設計部 原子力メンテナンス機器設計グループ [担当:米谷]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町5丁目2番2号
電話 0294-55-5473(直通)

報道関係お問い合わせ先

日立GEニュークリア・エナジー株式会社
事業企画本部 原子力事業企画部 経営企画グループ [担当:和気]
〒101-8608 東京都千代田区外神田一丁目18番13号
電話 03-4564-4378(直通)

以上