2050年のカーボンニュートラル社会の実現には、原子力エネルギーを長期にわたって活用することが求められています。原子力をさらに安全で持続可能なエネルギー源とし、社会への受容性を高められるよう、当社は高速炉と燃料サイクル技術の開発を進め、資源の有効活用や放射性廃棄物による環境負荷の軽減に取り組んでまいります。
ウランは天然の鉱物や海水に含まれる物質です。ウランは主にウラン235 (全体の約0.7%)とウラン238(全体の約99.3%)という2種類で構成されています。今日、原子力発電においては、このウラン235の濃度を3~5%に高めた濃縮ウランを燃料に使用していますが、このままではウラン資源は今後数十年から百数十年後には枯渇してしまいます。
こうしたウラン資源の有効利用を図り、利用効率を飛躍的に高めるための燃料再利用計画が高速炉サイクルです。回収した使用済燃料を再利用したり、これまで燃料として利用してこなかったウラン238を「高速炉」において利用することにより、持続可能なエネルギーとすることが可能となります。
原子力発電所で使用した燃料には、資源として再利用可能な物質の他、長期間にわたって放射能や発熱性を持ち続けるマイナーアクチノイドといわれる物質が含まれます。こうした毒性の強い物質が放射性廃棄物に含まれるため、天然ウランと同程度の放射線量となるまでには、約8000年が必要ですが、高速炉を利用し核変換を行うことにより、この期間を約300年に短縮することが可能となります。
当社がめざす燃料サイクルにより、原子力発電で使用された燃料を再処理してMOX燃料※1と呼ばれる燃料に加工し、原子力発電の燃料として再利用することができます。発電後の使用済燃料の中には、核分裂していないウランや、原子炉内で生じたプルトニウムが含まれていますが、これらを取り出し、再度、原子力発電用の燃料として利用することができます。また、高速炉サイクルにより、ウランなどの資源の利用効率を飛躍的に高め、原子力エネルギーを将来にわたって持続的に活用していくことが可能となります。さらに、毒性の強い放射性廃棄物の量を減らす(減容化)とともに、天然ウランと同程度の放射線量となるまでの期間を大幅に短縮すること(有害度低減)ができます。
当社は、こうした核燃料サイクルを実現するために、次に紹介するようなさまざまな技術開発を行っています。
当社は、高速実験炉「常陽」、高速増殖原型炉「もんじゅ」の設計・建設・保全対応に参画してきました。引き続き、常陽の新規制対策工事~再稼働と、もんじゅの廃止措置に貢献していきます。また、経済性と安全性、柔軟性を兼ね備えた金属燃料高速炉である「PRISM」を米国GE日立ニュクリアエナジー社と共同で開発を進めています。PRISMは、事故時に電源および運転操作を必要とせず、長期間の炉心冷却を実現する受動的安全系設備と、固有安全性などを特長とする金属燃料を採用し、さらに1基当たり311MWeの小型モジュール炉の設置数により、高い安全性と柔軟なプラント構成を可能とします。
高速増殖原型炉「もんじゅ」
提供:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
革新的小型ナトリウム冷却高速炉「PRISM」