除染地域での活用を目的とした移動式焼却設備『Hermit Crab』を開発

2013年2月7日
株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス

株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス(取締役社長:瀧澤照廣)は、このたび、原子力発電所の災害対応において、居住区の除染対象物の焼却および減容化を目的とした移動式焼却設備『Hermit Crab*1』を開発しました。本設備は、3月初旬より福島県内で約1ヵ月間の実証試験を実施する予定です。2013年度から同県を中心とする除染対象地域での活用をめざします。

現在、福島第一原子力発電所の周辺では、拡散した放射性物質が付着した、木質チップ、バーク(樹皮)、剪定枝や稲わらなどが多数存在しています。今後、これらを効率よく除染、保管するため、焼却・減容化の必要性が高まってくると予想されます。その際、課題となるのは、焼却対象物の焼却設備への運搬です。

この課題を解決するため、日立エンジニアリング・アンド・サービスは、省エネルギーでコンパクトな浅層流動床燃焼技術*2 を有する宇部テクノエンジ株式会社(代表取締役社長:三木省一)の協力のもと、移動式焼却設備『Hermit Crab』を開発しました。今回開発した『Hermit Crab』は、焼却設備をコンテナに収納し移動を可能とすることで、焼却対象物の近くで焼却・減容化が可能となり、より効率的な除染に貢献します。本設備は、チップ、バーク(樹皮)、剪定枝や、完全燃焼させるのが難しい稲わらなど、通常の移動式焼却設備では焼却が難しいとされる湿分の高い焼却物にも適応しています。また、日立エンジニアリング・アンド・サービスの原子力施設における放射性物質取扱機器の設計技術を反映し、放射性物質飛散防止の安全対策をしています。

*1
ヤドカリの意。コンテナ(貝殻)内に機器を配置し、放射性物質を閉じ込めて、大気に放出しない。また、焼却設備を収納したコンテナ(貝殻)ごと移動する、ことから、この名前を付しました。
*2
浅層流動床燃焼技術:砂層が浅い炉を使用し、砂層の底部の複数の穴から空気と助燃料の燃焼ガスを吹上げ、砂層に投下した燃焼対象物を巻き上げられた砂層と一緒に流動燃焼させる燃焼技術です。流動床燃焼技術は、蓄熱量が大きいので比較的含水率の高い燃料の燃焼に適しています。

移動式焼却設備『Hermit Crab』の特長

  1. 多種多様な焼却対象物に適応
    • 1つの燃焼炉で多種多様な焼却対象物(チップ、バーク(樹皮)、剪定枝等)を始め、完全燃焼させることが難しい稲わらなどの単独燃焼が可能です。
    • 湿分の高い焼却対象物も単独燃焼が可能です。
  2. 移動可能な焼却設備により、効率的な除染を実現
    • 一般道路走行も可能な40フィートコンテナに焼却設備を収納することで、容易な移動を可能とし、効率的な除染を実現します。
  3. 放射性物質飛散防止の安全対策
    • 焼却運転中は、誘引ファンおよび換気ファンにより設備内の系統およびコンテナ内圧力を負圧にすることにより、放射性物質の飛散を防止します。
    • 焼却運転中に、電源供給用の常用発電機が停止した場合でも、常備している非常用発電機を手動で起動し、誘引ファンおよび換気ファンを再起動することで、放射性物質飛散防止を維持します。
    • 焼却運転中は、排ガスモニターで排ガス中の放射性濃度を簡易測定し、監視します。

「Hermit Crab」の仕様

装置名 移動式焼却設備
重量 約21t(付帯設備含む)
外形寸法
(40 フィートコンテナ)
高さ:2,896mm
幅:2,438mm
長さ:12,192mm
焼却炉床面積 0.25m²
燃焼量 20~30kg/h
焼却炉型式 浅層流動床

「Hermit Crab」の外観

「Hermit Crab」の外観1

「Hermit Crab」の外観2

照会先

株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
プラント本部 原子力サービス部 [担当:北井、大野]
〒317-0073 茨城県日立市幸町三丁目2番2号
電話:0294-55-6861、7027

報道機関お問い合わせ先

株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス総務部 [担当:藤田]
〒317-0073 茨城県日立市幸町三丁目2番2号
電話:0294-55-8505

以上

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